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忘れることを前提に

観た映画メモ。ネタバレに配慮しないよ

"映画感想"カテゴリーの記事一覧

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  • お嬢さん

    なんてさわやかなのだろう、蝶の羽音のように笑いさざめきながらどこまでも駆けて行け、君たちの征く手を遮るものは破壊してやれ!て走り去る二人の後ろ姿に大きく手を振って見送りたくなるような、気持ちのいいお話だった。抑圧と暴力を強いる男たちには出来ないやり方で愛を交わす秀子とスッキの美しい姿。無理強いから快楽は生まれないと籠の鳥でも知っている。

    好意の描き方がとても好みでさすが安心と信頼のパク・チャヌク…!私のお乳が出たらあなたに飲ませてあげるのに、なんて愛情表明として究極じゃない?奥歯を削ってやるために秀子のくちに親指入れるスッキ、その間スッキの肘ずっと触ってる秀子、唾液を飲み込む音が聞こえるほどの静寂、吐息、あえぐ声、雄弁に恋を語る視線。ものすごく下品で下劣な環境にあるのに、あのふたりのやり取りは蜜の香りがしそうなほど甘やか。

    私の飴、まがいものの青玉、手がけてきたものの中でいっとうきれいな作品だと思っていた秀子が受けていた扱いを知ったときのスッキの怒りは計り知れないだろうなあ。叔父の本を、書斎を、朗読を、秀子を閉じ込める牢獄を破壊しつくしてくれる姿にこちらまで救われたような気分になった。段差に立ち止まるお嬢さんにトランクで足場を作ってくれて、屋敷から出るための道を作ってくれる救世主。あんなん胸を打たれるに決まってる。

    あわれな秀子お嬢さま、あんなに窓に顔を押し付けて外を見ていらっしゃる…とか思っていたらとんでもなかった。高飛車な態度がとてもよくお似合いになるキム・ミニさん、愛らしく頼もしいキム・テリさん素敵だった。虐げられていた生き物が幸福をつかみ取る爽快。

    監督:パク・チャヌク
    脚本:チョン・ソギョン、パク・チャヌク
    音楽:チョ・ヨンウク

    原作:サラ・ウォーターズ「荊の城」

    原題:Ah-ga-ssi


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  • バーフバリ 伝説誕生


    めっちゃ続きが気になるところで続編へつづく!てされるので気が気ではない。

    カッタッパー!ど、どうしてだよー!

    一昔前のディズニー映画の実写化はボリウッドがやったらいいのでは?てくらい、前半の登場人物の動きとか画柄は夢いっぱいな線で構成されている。ヒロインとはあっという間に恋仲になったりなるほどインド映画である。とても分かりやすく主人公のための物語。

    意味が分からん(褒めてる)のが後半。
    えっもうなんかすごい、意味が分からん(褒めてる)よくそんな画を撮ろうと思いましたね…あんな戦場にいたら呆けてしまう…そして気づいた時には勢いに押されて\バーフバリ!バーフバリ!/とくちにしてしまう…いやよく知らんけど…物量と熱意とシヴァガミさまの目力に圧倒される…

    とりあえずカッタッパにどうしてなのか訊きたいのではやく続き…

    監督、脚本:S・S・ラージャマウリ
    音楽:M・M・キーラバーニ

    原題:Baahubali: The Beginning


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  • 手紙は憶えている

    いざ征かん、狼のひとり旅。

    犬が死んだからダメです(定例報告)しかし飼い犬がどんな犬かでその家庭がどんな環境かよく分かる、荒んだ家で飼われている犬は攻撃的で、誰彼かまわず吠える…

    絶対こいつが黒幕だしきっとこーゆー仕組みのやーつだぜ…俺はくわしいんだ…て思っていた通りの展開だったので驚きは少なく、ただ「90歳の認知症の老人が息切れし震えながら痛ましく記憶をたどり目的を果たそうとする」描写が胸に痛い。妻が亡くなったことも忘れてしまい、目覚めるたびにルース、ルース、どこだ、明かりをつけてくれ、私に話しているのか?と呼びかけ、そして何回も妻の死を知る。いつか自分もああなるかも、と誰もが恐れる未来の痛ましい姿。そんな風に何もかもこぼれていくのに、あっという間にあの戦争が、強制収容所が「ゼブの頭の中には」戻ってくる。いまだ我々に制御できない脳と記憶の恐ろしさ。

    メモ:ゼブが鏡を見るシーンが無かった気がしたがどうだったか?次の機会に確認すること

    監督:アトム・エゴヤン
    脚本:ベンジャミン・オーガスト
    音楽:マイケル・ダナ

    原題:Remember
    最後に原題出るの見ると「憶えている」より「思い出す」のイメージのが強いなと思った。忘れていた記憶がよみがえった。


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  • スター・ウォーズ/最後のジェダイ


    なんかもうめっちゃ良かった。

    とても良かった。ルークとレイア、スカイウォーカーの双子の話で、レイとカイロ・レン、同じ師を持つ魂の双子の話で、そしてなによりルーク・スカイウォーカーの話だった。タトゥイーンの夕日を見ていた青年。誰もが空をみあげて語るおとぎ話の主人公。

    わたしがはじめてちゃんと見たスター・ウォーズはEP1のファントムメナスで、スターウォーズってつまんないんだな、こーゆーのってやっぱりその当時の「旬」を味わったひとじゃないと楽しめないんだろうなってところからスタートきったもんで、そもそもの期待値がそんなに高くなく。家族の問題に銀河系が巻き込まれる話、ジェダイオーダーはなんか鼻につく、クワイ=ガン諸悪の根源じゃん~て思っていた。

    今回はそーゆー鼻についた部分を否定しててとても嬉しかった。大切なのはジェダイオーダーではない、寺院ではない、ありがたい書物ではない。そんなものは焼き払ってしまえ、師の教えは弟子に継がれていく。フォースは強弱の差はあれど万物に存在し、けして特別な血筋だけに与えられたものではない。何者でもない両親から産まれた子どもが英雄のように立ち上がる一方で、英雄の血筋の子どもが光の道を歩むとは限らない。真実は多面で、切り口によってさまざまな解釈があり、戦争は善と悪の戦いだと単純にくくれるものではない。特別でない我々の為に新たに語り継がれはじめた神話。

    スターファイターのアクションも、ライトセーバーの殺陣も格好良く、口笛吹たくなるようなイカすカットが目白押し。単機で猛攻かけるポーとか、美しいカジノの街がめちゃめちゃになるとか、ホルドー中将の最期とか、レイ+カイロ・レンVSプレトリアン・ガード戦とか、塩の大地に立つレイアとか、白に映える赤とか、ベンVSルーク戦とか際立って素晴らしかった。

    「ローガン」見た時も思ったけど、物語が助けに来てくれるなんていいよな~虐げられていた奴隷たちの前に現れて解放してくれたローズ、窮地に陥った反乱軍前に夢のように現れて、時間を稼いでくれるルーク。生き残った人々が彼らのことを語り、彼らは伝説になり、彼らは希望になり、誰かのこころのよすがになる。
    これまでのスターウォーズが作り上げた宗教が崩壊し新しい物語が始まる。すべてが一新する。フォースを操る少年が、反乱軍の旗を手に星空を見上げるラスト。物語の登場人物に救われた彼らが語る物語の続きが早く聞きたい。

    監督、脚本:ライアン・ジョンソン
    音楽:ジョン・ウィリアムズ

    原題:Star Wars: The Last Jedi


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  • ローガン・ラッキー

    「オーシャンズ」シリーズ見た時も思ったけど、

    犯罪ってすげー手間がかかる。

    なんとゆー準備と根回しの連続!
    計画を練り、仲間を集め、下見をし、必要なものを集め、情報を集め、トラブルを想定し、プランBを練り、協力者を集め…実際に現金強奪作戦を決行するまでちゃくちゃくと準備と根回しをする姿に、強盗成功させんのってちょう大変じゃん!こんなん心が折れるわあんたらすげーな!てなること請け合い(てきとう)
    すべきことを黙々とこなすローガン一家の「これがはじめてじゃない」っぷりが見ていて可笑しいし気持ちいい。そもそもむっちむちテイタムさんと壁のようにぬんと立つアダム・ドライバーが兄弟って時点ですでに何だか可笑しい。兄ちゃんを殴った奴は車に火ぃかけちゃるぞ!MI6辞めたダニクレもおっさん丸出しでめっちゃ楽しそうだった。

    労働者階級の勝ち組になれない白人、州境のこちら側、ローガン家の呪い。うんざりする状況に真っ向からケンカを売って、見事1ポイント先取したジミー・ローガンに祝福の「カントリー・ロード」が響く。子役の子またちょうどいいバランスの子見つけてきたなすきっ歯で歌も上手すぎず。過不足なく楽しかった。ゲースロの話はあんまりしないであげてよお。

    監督:スティーブン・ソダーバーグ
    脚本:レベッカ・ブラント
    撮影:デビッド・ホームズ

    原題:Logan Lucky


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  • オリエント急行殺人事件


    何度目だオリエント急行の殺人!

    世界規模でオチが筒抜けになっている話を懲りずに再映像化するチャレンジ精神に驚嘆するぜ!

    まあでも「あれ犯人ヤスだよ」的にネタがバレてる話をそのまんまやってもつまんないってんで、ポワロがすごい髭の、わりと動ける、正義か悪しかねーから!中間とかねえし!てゆー極端なやつになっていたり、トリックはあっさりだったり、「多用な国の、多用な人種が乗っている寝台特急」の描写が強調されていたり、アクション要素があったりしている(華麗な回し蹴りかますセルゲイ・ポルーニンさん!)。すごい髭のポワロが動物の糞をうっかり踏んでしまって「片足だけだとバランス悪いから」ってもう片っぽの足でも踏むシーンとかもうそれだけで何度目だオリエント急行の殺人なフレンズは

    こ、このポワロいつものと違うな!?

    て分かる。差別化のこころみ。好きか嫌いかは別として。はじめましてのひとにはふんふんポワロってこんな感じなのねってなると思う。多分。知らんけど。

    列車が舞台で空間に制限があるので車両を駅側から横スクロールで撮ったり、天井からの視点で通路や客室を撮ったり、橋の上に停車した車両を下から上へと撮ったり、撮り方が面白いなと思ったシーンがいくつか。歩く速度のひとを追いかけ、追い越すカメラさんのいい仕事。かと思えば最後の晩餐みたいなカットがあったりしてびっくりする。いいところはたくさんあるのに振り返ってみるといまいち釈然としない…ケネス・ブラナーとはなかなか分かり合えない…

    監督:ケネス・ブラナー
    脚本:マイケル・グリーン
    音楽:パトリック・ドイル
    撮影:ハリス・ザンバーラウコス

    原題:Murder on the Orient Express

    ===

    オリエント急行の殺人の映像化はデヴィッド・スーシェの「名探偵ポワロ」のやつがとても好きなのでどうしても比べてしまう、てのが釈然としないあれかもしれない。名探偵ポワロはいいぞ…流した涙も凍るような極寒の冬景色の中に置きざりにされるような何とも言えない気持ちになるよ…名作…


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  • パターソン

    ほとんどホラー映画の文脈な気がする…なんっとなく不穏な音楽にのせて流れるバスの様子や、夢のようにふわふわした奥さまや、繰り返し映る双子や、バーのネオンサインの色彩、世界を支える巨人のようにぬんと立つアダム・ドライバー…どうしてか不安な気持ちにさせてくる…のに結果そーゆー話ではなかった…この奥さまは実は死んでいて家の中は血まみれなのでは…とか犬がワンジャックされてしまうのでは…とかバスで事故が…とかバーで事件が…とかちょいちょい身構えていたけど凄惨な事件は起こらなくて、あれ?てなってしまった。

    音楽家が道の途中で悪魔と出会うように、詩人は詩の天使に会うみたいなことなのかな。平凡で決まりきった毎日です、みたいな顔をしているけれど、あなたは詩人だし詩的な出来事に囲まれているとあちこちで合図がある。ひらめきやヒントが次々に送られ、失ったと思っても手元に戻ってくる。そうやって続けたひとたちが新聞に載って、殿堂の壁に飾られる。きっとパターソンもいつかあそこに並ぶんだろうな。創造するひとを肯定する、えらくやさしい話だった。

    監督、脚本:ジム・ジャームッシュ

    原題:Paterson




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  • 探偵はBARにいる3

    前作「探偵はBARにいる2」がとても愛しにくい映画だったので、期待値低~い状態で見に行ったんだけどちゃんと普通に楽しかったです。こんなもんだよな~

    長回しのアクションシーンはスローで動いたのをハイスピードカメラで撮ってるっていんたびゅで大泉さんが言ってたけど、見慣れないせいかおお~すごい!迫力!ては思えず…スローの画を効果程度に入れるか、早い動きの方が良かったんじゃないかな~と思ってしまった。そしてこのシーンで使ってるのの三分の一くらいの音量でいいから探偵がマリをビンタする時のSEに使ってあげて欲しかった…た、探偵が殴った!みたいな衝撃がなくてそっと微笑んでしまった…

    シリーズ物の醍醐味「レギュラーキャラを愛でる」の部分は文句なしにみんなかわいかった特に高田くんがね…後輩や恩師とちゃんとコミュニケーション取れてる、社会人の真似事が出来ちゃう、ヘルプコールも出来ちゃう、てすごいじゃん高田くん、ちゃんとしてんじゃん…てにやにや。地面に倒れている探偵に手を差し出して助け起こしてやるとかそーゆー男ですよ高田くんは。得難い友達ですよ。そりゃ別れ道で予定よりも長めに振り返って見つめてしまうわな…
    あとあっちゃんが。あっちゃんはどんな映画のなんの役でもあっちゃんですね、あのぐにゃぐにゃしていまいち信頼のおけない登場人物感。あっちゃんにまたホラー映画に出て欲しいな…SAWみたいなスリラーで被害者かと思ったら犯人みたいなあっちゃんが見たいよ…

    キャラクター、ロケーションとおおむね楽しいんだけど、動くひとを撮るカメラがけっこうぶれるとか、ひゅーかっこいい!てキマる画が少ない気がしたとか、細かいとこがもっとこう…てなっちゃった。もどかしい。

    監督:吉田照幸
    脚本:古沢良太
    音楽:池頼広




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  • ジャスティス・リーグ

    「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生」でスーパーマンが死んでしまい、世界からは希望は失せた…もうだめだ…死ねば助かるのに…みたいなドン暗いところから始まる。きっと監督がザック・スナイダーのままだったらサイボーグの腹に穴が開いたりバットマンが瀕死の重傷を負ったりしてヒリヒリしたんじゃないかなと思うんだけど、今作はスタートのドン暗さからけっこうなスピードでトップギア入って希望の火が灯る。ざっくりサクサク進行。

    上映時間120分。素晴らしい。

    (ジャスティスの誕生は上映時間152分)

    はじめての引率に戸惑うバットマン先生とワンダーウーマン先生、同じくはじめての友達に戸惑うサイボーグくんとフラッシュくんとアクアマンくん、立ち位置的に引率なのに生徒みたいに自由にしてるスーパーマン先生によるはじめての課外授業:地球侵略を阻止せよ!の巻でした~各々傷を抱えてひとりでやっていこう…て殻にこもっていたキャラクターが一緒にやってみよう!と不器用に歩み寄る姿が微笑ましい。ドラマ版よりはるかにコミュニケーションに難あり風な(あくまで風な)バリー・アレンのエズラ・ミラー力(えずら・みらーぢから)におののいたかーわいこちゃーん…あの子の「OK」のバリエーションったら…横たわる裸婦像みたいなポーズも見せてくれて大変満足でしたありがとうございました…

    アビリティ的な魅せ場はリーグのメンバーはもとよりアマゾンの戦士たちによる「箱」のリレーのシーンがピカイチでした工夫満載でちょう楽しい。映画「ワンダーウーマン」と今作では衣装デザイナさんが男性に代わってしまい、アマゾネスの鎧が露出の多い実戦的でないものになってしまって残念、みたいな意見を見たんだけど、落とし戸を支える戦士たちのあの腹筋を見てしまったらわたしは何も言えなかった…ちょうかっこよかった腹筋…二の腕…ふともも…

    「希望」は失せたとうつむく人々の前に、旗をひるがえし我々に続けと宣言するヒーロー達のはじまりの話。続編があるとしたら、ダークにシリアスになりすぎないといいな…ベンアフのブルース・ウェインはかわいいし上手いんだけど、一連のセクハラ関連の情報が目に入るたびにげんなりしてしまって、楽しみ楽しみ!て手放しになれないのだった…

    監督:ザック・スナイダー
    脚本:クリス・テリオ、ジョス・ウェドン
    音楽:ダニー・エルフマン

    原題:Justice League


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  • PK

    とても良かった。「うさんくさい」と思ってしまった「宗教」に対してとかく攻撃的になりがちだと思うんだけど、PKの指摘は真摯でやさしい。信仰は生きるよすがになる大切なものだという点は肯定し、「神さま」との仲介をする「代理人」に注意をうながす。領収書を受け取るまで帰っちゃだめよ!

    そもそも「宗教」って生きづらい時代のひとが生きやすく、もしくは死にやすくするために開発して、それで金や権力を維持したい人たちがシステム組んで運営しているものだと思っているので、あんなに純粋に「神さまが助けてくれるんだ!すごいじゃん!」て信じてくれちゃうPKに頭が下がる…疑わない宇宙人…でかい目をぎょろぎょろさせるアーミル・カーンさんはほんとに無垢に見えるね…

    あのパキスタン大使館の職員の皆さんもうほんっとうにめちゃくちゃ嬉しかっただろうな~いちいちみんなかわいかった。元気が出る。いくつもの姿を持ちそれぞれの名前で呼ばれる「神さま」と、それを信じ宗派ごとに分断する人間や国、親子、恋人同士に、やさしく寄り添ってくれる迷子の宇宙人。必要なのは「信仰」であって「宗教」ではない。

    監督:ラージクマール・ヒラーニ
    脚本:アビジャート・ジョーシー、ラージクマール・ヒラーニ
    音楽:シャンタヌ・モイトラ、アジャイ=アトゥル、アンキト・ティワーリー

    原題:PK


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  • シークレット・オブ・モンスター

    ライオンが、見逃してやったネズミに後日命を救われたように、誰かが何かを見逃してやっていれば、独裁者は誕生しなかっただろうか。かんしゃく持ちの少年の中にあった素養が、周囲の大人たちの言動を栄養に成長していく。
    プレスコット役のトム・スウィートくんのきれいさの説得力よ…ととのった顔の子がするにくにくしげな表情の迫力…

    モナが「ご一家の破滅に残りの人生を懸けます」って言ったシーンがものすごく好き。ひとがひとに呪いをかけるのを目の当たりにした。この映画ではたくさん「秘密」の場面をみるけど、あそこだけすとんと「そうですよね」ってなる…

    集中を強いてくる音楽とカメラさん、美術さんのいい仕事。冒頭、暗闇の中大統領を歓迎する国民も、終盤独裁者プレスコットに熱狂する国民も、わたしにはなんとなく恐ろしく愚かに見える。素養のある生き物の中に衆愚のエネルギーが流れ込み、「独裁者」を作り上げる。プレスコット本人にもコントロール出来ず、民衆は弱いものから犠牲になっていく。破綻を予感させるありようがしみじみ悲しい。

    監督:ブラディ・コーベット
    脚本:ブラディ・コーベット、モナ・ファストボルド
    音楽:スコット・ウォーカー
    撮影:ロル・クローリー

    原題:The Childhood of a Leader


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  • ブレードランナー2049

    ※前作「ブレードランナー」は見てない

    犬が(多分)死なないのでいい映画です(定例報告)
    ドゥニ・ビルヌーブ監督の映画は音がびりびりびりびり響いて緊張をあおり、かと思えば無音になって集中を強いてくる…もうど頭SONYの文字が出てくるところから音がすごい。

    奇跡を見る映画、なのかな。途中までは捜査官Kがその「奇跡」なのかと思いきや違った、Kと一緒になって奇跡を目撃し見届ける話だった。見て、知ってしまったら、これまでの生き方にあまんじることは出来ない。

    レプリカントのKは「人間もどき」と蔑まれ、プログラム?のジョイは「中身がない」と軽んじられる。「人間ではない」存在は抑圧され「本物ではない」と尊重されない。製造番号しか持たず名前がない存在は愛されていないし、望まれていないし、特別にはなれない。手の甲で溶けて水になるひとひらの雪みたいに全然確固としていない彼らの、けれど愛やら魂やらが「本物じゃない」なんてどうしていえるのだろう…ホログラムのジョイが椅子に座ろうとするのを見てとっさに椅子から足をおろすK、「殺される」と悟ってKに「愛してる」と遺言を残すジョイ。本物は見ればわかると思ってしまうのは感傷的すぎるだろうか…

    見方によってはスペシャルにも、何者にもなれない存在にも見えるKはライアン・ゴズリング適役だと思うな~何者にもなれない我々を奇跡へと導くスコープ。特別でない自身を肯定するきっかけ。

    しかし攻殻機動隊のマンガ読んで、いつかこの肉体を出ることができるようになる、てわくわくしているので、2049で「愛するひとにさわりたい」て普遍的な欲求が描かれ身体が重要視されているのを見ると、わたしが期待しているSFとは違うな…てどうしても思ってしまう…

    ところでトーマス・レマルキスさんが出てるなんて知らなかったぞ!もともと「キャプテン・フィリップス」で海賊ムセ役だったバーカッド・アブディさんが出てるって聞いて見に行ったんだけど、急に美人が出てきて嬉しい驚きだったわーいわーい。

    監督:ドゥニ・ビルヌーブ
    脚本:ハンプトン・ファンチャー、マイケル・グリーン
    音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ、ハンス・ジマー

    原題:Blade Runner 2049


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  • ジグソウ ソウ・レガシー

    帰って来たよ!ジグソウ先生の「お前に生きる価値があるのか試させていただく」ゲーム!

    なにさまだ!

    しかしSAWシリーズを全く見ていなくて、今作で晴れてSAWデビュー☆みたいなひとがいたとしたら、そのひとはこの「ジグソウ」でちゃんとびっくり仰天してくれるかな…てなんかちょっと心配なところがある…。わたしはSAW一作目でとても素直にええー!?てなったのであの衝撃を初めて見るひとにじゃんじゃん味わってほしいんだけど、「ジグソウ」はまだ個人が行う犯罪としては規模が大きいし大仰なので、準備どうやったの…?て見てるひと冷静になっちゃうんじゃないかなと心配…お願い我に返らないで…。

    ゴア描写とゆーか、ゲーム参加者にえんえん叫ばせるような嫌悪感マシマシ描写はおさえめ(な気がした)で、奇をてらおう、原点に帰ろう、とゆー気概は感じたのでそこは好感です。正直きっとつまんないだろうな…て覚悟しながら見に行ったから意外と楽しめてしまって驚き。トビン・ベルさんの声でしゃべられるとやっぱり嬉しくなってしまったんだよなあ。

    シリーズを見ていてジグソウ先生のやりくちに慣れている観客はお前が最前列だな!てすぐ分かるし、そんな無造作に装置引っ張ったら糸ぴーってなって仕掛けが作動してしまう!あほら言わんこっちゃない!てなること請け合い。

    監督:マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ
    脚本:ジョシュ・ストールバーグ、ピーター・ゴールドフィンガー
    音楽:チャーリー・クロウザー

    原題:Jigsaw



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  • マイティ・ソー バトルロイヤル


    I've been falling…for 30 minutes!

    いい。わたしも椅子から立ち上がってッシャオラァ!思い知ったかー!てやりたい。ワイティティ監督とは笑いのツボが合わないので腹抱えて大爆笑!てはならなかったけど、ゴキゲンかっこよバトルと、何よりも「より良く変化しようとするものが勝つ」て姿勢がいい。

    より一段とハンマー使いが上達した冒頭ソーのバトル、近距離と同時に遠距離攻撃を行い空挺までも落とすヘラさまのアクションかっけーかっけー、これゲームだったらやりたいコントローラーどこ?中でもヴァルキリーVSヘラの荘厳かっこよバトルの模様は額装して美術館に飾って欲しいくらいだった…どこまでも絵になるケイトさまとテッサちゃん…

    個人差はあれどキャラクターに変化が見られるのが何だか感慨深い。ソーは分かりやすく成長したな~とゆーかロキの扱いが格段に上手になった。ロキとバナー博士はこれからもっと変わっていくのかな…?誰からも憎まれている、嫌われていると思っていたふたりが、必ずしもそうではないと思えるようになるといいな。ロキは言動のはしばしから愛されたい認められたいってのが伝わってくるし、今作のハルクはきかん気の子どもみたいでちょっと切なかった。
    ところでヘラがロキに「物言いがオーディンにそっくり」ていうところとてもグッときた…血がつながっていなくても、親子だってすぐまわりには分かってしまう…

    大切なのは場所ではなく、民であるということ。今並んで見ているこの景色こそが故郷であると言う王と、流浪の民たち。破壊と略奪を繰り返すのではなく、今よりもより善く変化しようと新天地を望む者たちこそが勝利する。MCUもどんどんよく変わっていってほしいな。

    監督:タイカ・ワイティティ
    脚本:エリック・ピアソン
    音楽:マーク・マザースボウ

    原題:Thor: Ragnarok


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  • シルク

    幽霊を捕獲し、死を超越したいってゆーか、病気で死期が近いし体はままならないしで散々だから死後に活路を見出したい江口洋介に振り回されるチャン・チェンさんの話。死ねば助かるのに…

    ちゃんと質量を感じる白塗りの幽霊がわりとぬるぬるぬるぬる動くので、恐怖度は大変に低い。死んだ子ども、その母親、母の延命を続ける息子、今まさに死にかけている母親、てゆー二組の親子の描写は良いと思うんだけどな~夢のようなお花畑の中に死体がぽつんとひとつある画のロマンティックさ。

    チャン・チェンさん優秀さを見込まれて江口の部下に引っ張って来られた刑事さん役。日本語も話すよ。終盤すったもんだの大立ち回りで盛大に怪我して鼻血吹いてのサービスカット満載。対峙した幽霊相手に挑むように不敵な顔をする。血濡れの美人はいいものだ。

    監督:スー・チャオピン


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