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忘れることを前提に

観た映画メモ。ネタバレに配慮しないよ

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スリー・ビルボード

ハッとするほど鮮やかな赤色と、穏やかなオレンジ色が心に残る。看板の赤、血、炎、電話、夜の部屋にうつる光。天使みたいに突然現れた野生の鹿の毛の色、ディクソンがレッドの事務所にかちこみかける時の光、ストロー付きのオレンジジュース、アイダホ行きの準備をする二人を照らす早朝の光。愛と怒りが濃淡を変えて画面にうつっているのかな、と感じた。怒りによく似た焦燥の赤と、やわらかいオレンジ色のジュース。ストローもある。「レッド」て名前はまるで共産主義のアカみたいだ、てディクソンが絡むのに赤毛だからだってレッドは返したけど、赤の名を持つ彼がディクソンにしてくれたことはとても象徴的な気がする。怒りと愛。

登場人物の誰ひとりとして善良ではなく、けれど誰も邪悪ではない。ミルドレッドは何度か行動しようと決意する、広告を出そう、クズどもに復讐してやる、アイダホに出かけよう。けれどその決意もたやすく揺らいでしまう、名指しで非難した警察署長の病の深刻さを目の当たりにして、クズだと思った男が捜査資料をかばって大やけどを負って、本当にいいのかまだ分からなくて。不当な暴力が突然ふりかかり、かと思えば意外なひとが助けてくれる、静かだけれど劇的な変化。たった三枚の看板によって街が一変したように、登場人物のあり様が変化するのが面白い。普段隠れていた一面が突然顔をのぞかせる。悪い言葉をたしなめるみたいに咄嗟に。

ディクソン役のサム・ロックウェルさん絶品だったな~椅子にハマるほどでかいケツとあの歩き方。全然ビシッと決められないのにキレた時の警棒の扱いが鮮やかで笑った。差別的なクズ警官なのに、ビリヤード上手い小男に「すげえな」ってふつうに感心しちゃってるあたりがな~環境や育ちが違えばこのひともしかしたら、な絶妙なバランス。

そしてピーター・ディンクレイジのピーター・ディンクレイジ力(ぢから)なんかもう…あんなのずるいと思う…

青空と夜の画はあっても夕方の画は無かったと思ったので(たしか)夕日が見たいなと思う話だった。オレンジ色の夕日。あのふたりがどっかで夕日を見て、そのまま帰ってきたらいいな、と個人的には思う。これはどっちかっつったら愛の話だと思ったので。

監督、脚本:マーティン・マクドナー
音楽:カーター・バーウェル
撮影:ベン・デイビス

原題:Three Billboards Outside Ebbing, Missouri


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